草間彌生 わが永遠の魂展

会期ギリギリに駆け込んだ。

券売所と入場口でそれぞれ数十分並んで待った。

人気のあることは知っていたが、ここまでとは知らなかった。

思えば5年前の今日、私は初めて松本を訪れ、

美しい街と、赤白の水玉模様の自販機やバスに驚いたものだ。

草間は松本の古い生糸問屋に生まれ、

幼児から幻覚に悩まされたようだ。

一見して、通常と異なるものを見ている目、強迫的に続く水玉に、

私は怖くて近寄れずにいた。

私自身は軽い呼名幻聴と鬱状態からくる離人感くらいしか経験したことが無い。

しかし、草間が絵画表現として描いているものの由来が

どういうものなのか、類推はできる。

そして私の中の小さな体験が、呼応するのが怖い。

まあ、重篤なものは私に無いので、ぴょろりと会場へ。

しかしやっぱり圧巻であった。

十代から八十代まで、水玉と網目の強迫は続く。

五年生の時に描いた母の像があった。

母らしき女性は俯き加減に無表情、

鉛筆で描く執拗な斑点に覆われている。

会場の外のケヤキやクスノキの幹も、赤白水玉の布に覆われている。

「かわいい〜!」とスマホで写真を撮る人たち。

草間の目には、五月の風かおる新緑の景色も、

安らぐべき母の肌も、

すべて斑点で覆われているのに!

幻覚を、網目の絵画や水玉のデザインに昇華した草間の

生きる力がまた凄まじく迫る。

ある部屋は、壁も天井も床も鏡張りで、そこここに置かれた電球が映っている。

「きれい〜!」

私は幼い頃から、風邪の治りかけに決まって

背後と口の中に無限の空間が広がる感覚に襲われた。

こんな部屋は、きれいというのも分からなくはないが、

不安と恐怖でしかない。

しかし、うまく再現しているな!

私が感じたものは、草間の世界と合っているのかわからない。

これから、自伝を読んでみることにする。

文章表現も達者な方なので、楽しみだ。

多色染めの手拭いが欲しかったが、

レジ待ちの行列が50分というのでアッサリ諦めて帰った。